確定拠出年金(401k)のメリット・デメリット
確定拠出年金とは
日本の年金制度は3つの階層となっている。
自分が支払った掛金の額と、自分の運用の成果によって、将来の給付が決まるもの。 保険会社の年金保険や学資保険と似た仕組みだが、掛金が全額所得控除という絶大な節税メリットがある。
個人型と企業型の違い
- 企業型:企業が導入して従業員のために掛け金を拠出したり、企業と従業員の双方が支払う
- 企業が導入を決めない限りは加入できない
- 個人型:個人が任意に加入し、自ら掛け金を支払う
個人型への加入条件
60歳未満の会社員で企業型確定拠出年金や企業年金(厚生年金基金・確定給付企業年金)に加入していない方
【限度額】
月額23,000円 ※企業の従業員(国民年金の第2号被保険者)
確定拠出年金のメリット
1.掛金額は全額所得控除
確定拠出年金(個人型)の掛金額は全額所得控除となり、所得税の課税所得が減額される。
例えば、年 276000円 (月23000円)を支払っている場合、2760000円全額が所得から減り、
それに対応した所得税、住民税が減る。
住民税と所得税の決め方
住民税:所得の10%に均等割・調整控除を加減算して決定
所得税:自治体により異なる場合がある。下記の表の通り
課税される所得金額※ | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000 |
※課税される所得金額 = 給与収入 - 所得控除額
下記の表は所得税は復興特別税は考慮せず、住民税は10%とした場合の概算額です。
課税される所得金額 | 所得税減税額 | 住民税減税額 | 合計 |
---|---|---|---|
2,500,000 | -27,600 | -27,600 | -55,200 |
5,000,000 | -55,200 | -27,600 | -82,800 |
8,000,000 | -63,480 | -27,600 | -91,080 |
13,000,000 | -91,080 | -27,600 | -118,680 |
毎月拠出する掛金が大きく、収入が高いほど、節税効果は高まります。 収入が高くなると所得税率が上がるため、減税額も上がる。
例えば、課税所得500万円の場合、税率は所得税(20%)、住民税(10%)を合わせて 合計で約30%です。条件の年27万6000円の掛金を支払うと節税額は1年で 82800円となります。
2.運用益が非課税
預金の利子、投資信託の分配金、値上がり益に対しては通常、都度20%の税金が発生する。
しかし、確定拠出年金の資産である間は課税対象とはならず、得られたリターンのすべてが
再投資に回ります。
定期預金の利息で1万円を得た場合、2千円の税金が取られるが、 確定拠出年金で定期預金していた場合は1万円がそのまま年金資産の残高に反映される。
NISAのように運用益を非課税にできる!!
3.年金受給時の税制優遇
通算加入期間の長さによって、積立年金資産の受取可能な年齢が変わる。
下記の年齢に達したときに、一時金または年金として受け取りが可能となる。
期間 | 受取開始が可能な年齢 |
---|---|
1ヶ月 | 65歳 |
2年 | 64歳 |
4年 | 63歳 |
6年 | 62歳 |
8年 | 61歳 |
10年 | 60歳 |
税制上の優遇措置は以下
- 老齢給付金(年金):雑所得として課税され、公的年金等控除が適用
- 老齢給付金(一時金):退職所得として課税され、退職所得控除が適用
- 障害給付金:非課税
- 死亡一時金:相続税等の対象
- 脱退一時金:一時所得として課税され、特別控除(年額最高50万円)が適用
老齢給付金(一時金)として受け取る場合は「退職所得控除」が適用される。
計算方法は下記の通りとなる。
退職所得の課税対象額 退職所得-(40万円×20年以内の掛金の積立年数+70万円×20年を超える掛金の積立年数)×1/2
例えば、 年 276000円 (月23000円)を20年支払った場合
276000 × 20 - (400000 × 20) = -2480000円 ※年当たり40万まで非課税
控除額が退職所得を超えるので全額控除対象となり、非課税となる。
企業の退職金がない場合は基本非課税になりそう。
確定拠出年金のデメリット
1. 手数料
確定拠出年金(個人型)に加入時
- 口座開設手数料が初回のみ数千円発生
- 国民年金基金連合会への2,777円は必ず発生
- 一部の金融機関では手数料が発生
- 毎月の手数料が発生(国民年金基金連合会に月103円、事務委託先金融機関(信託銀行)に月64円程度、運営管理機関に月0円~700円程度)
掛金拠出時期は、最低でも月167円程度の手数料がかかる。
その他、給付・還付・移換・運営管理機関の変更の際にそれぞれ事務手数料が発生
2.特別法人税
確定拠出年金の導入以来ずっと凍結されており、一度たりとも課税されたことはないものだが、凍結解除時は以下が課税される。
確定拠出年金に関する毎年の年金資産残高:特別法人税(1.173% 内訳:国税1%+地方税0.173%)が課税
金利が0%近くの状況では、特別法人税の凍結が解除されるリスクは極めて低い。
将来的に定期預金の金利が大きく上昇し、例えば2%や3%になった場合は、凍結が解除される可能性がある。
3. 60歳までは原則として解約不可能
確定拠出年金は公的な年金制度に位置づけられており、税制優遇によって市民に老後のための貯蓄を促すことで、老後難民の増加による生活保護費の増加を防ぐ政策意図がある。
よって、60歳までは原則として引き出せない制度設計になっている。いざお金が必要になっても引き出せないという流動性リスクがあり。
4. 転職・退職時に年金資産を移管できず損するリスク
2016年までの制度では、年金資産の持ち運び(ポータビリティー)の面で絶大なデメリットがあり。
確定拠出年金の加入者が、確定拠出年金(企業型)がなくて企業年金がある企業や公務員に転職したり、第3号被保険者(専業主婦等)になった場合は、確定拠出年金の残高を企業年金に移すことができず、新たな拠出もできなくなる。
2017年以降は制度改正によって、このデメリットは改正で緩和される。確定拠出年金の残高を企業年金に移すことが可能となる。
具体的には下記の「2017年以降の確定拠出年金」を参照
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メリット・デメリット、運用方法、確定拠出年金額の控除、受け取り時の節税方法などを押さえていくと完璧です。